こんにちは!
岡山市東区のさかい歯科クリニック、副院長の坂井優です。
今回は、子どもの歯並びの中でもご相談が多い
『出っ歯(上顎前突)』についてお話しします。
最近、小児歯科の診療をしていて私自身が感じていることがあります。
それは、
「出っ歯の子、多くない?」
ということです。
もちろん、これはあくまで日々子どもたちを診察している中での私自身の臨床的な印象であり、「日本の子どもの出っ歯が近年急増している」と断定できるものではありません。
しかし世界的に見ても、出っ歯(上顎前突)やそれと関連するClass II(Ⅱ級)不正咬合は決して珍しい歯並びではありません。
そして子どもの出っ歯について知っていただきたいのは、
「前歯が前に出ている=前歯だけの問題」とは限らない
ということです。
実はその背景に、
「上の前歯が前に傾いている」
だけではなく、
- 上顎と下顎の位置関係
- 上顎の過成長
- 下顎の成長不足
- 口唇や舌などの口腔機能
- 指しゃぶりなどの習癖
などが関係していることがあります。
今回は「出っ歯シリーズ」第1回として、
そもそも出っ歯とは何なのか?
どれくらい珍しいものなのか?
子どものうちから見ておく意味はあるのか?
について、できるだけ分かりやすく解説します。
私は日頃から小児矯正の診療に携わっており、2026年には歯科医師約140名を対象とした講演会にて、不正咬合をテーマに講演する機会をいただきました。

実は僕、出っ歯でした

はい。小学生の僕です。笑
偉そうに出っ歯について語っておりましたが、実は私自身も子どもの頃、かなりの出っ歯でした。笑
上の写真は、小学生の頃の私です。
どの写真を見ても、上の前歯が前に出ているのが分かると思います。
そしてどの写真もサッカーのユニフォームなのがわかります。笑 当時僕の一番のオシャレは日本代表のユニフォームでした。笑
当時の私は、前歯が出ていることに加えて、歯並びもガタガタ。
その後、永久歯を抜歯してワイヤー矯正を行い、長い期間をかけて歯並びを治療しました。
今振り返ると、単に「前歯が出ていた」だけではありません。
口がポカンと開きやすい、鼻が詰まりやすい、舌の位置が低い、姿勢が悪い……。
歯科医師になった今だからこそ、
「歯並びだけではなく、お口の機能や顎の成長も含めて、もっと子どもの頃から意識していたらどうだったろう?」
と思うことがあります。
そして現在、小児歯科・小児矯正に携わる中で、昔の自分とよく似たお子さんに出会うことが少なくありません。
だからこそ私は、「出っ歯だから前歯を引っ込めればいい」とは考えていません。
まず大切なのは、
「なぜ、この子は出っ歯になっているのか?」
を考えることです。
では、そもそも私たちが普段「出っ歯」と呼んでいる歯並びとは、どのような状態なのでしょうか?
この出っ歯の矯正の経験がきっかけでマウスピース矯正を極めようと決意しました
余談ですが、私にとって矯正治療は決して楽なものではありませんでした。
- 装置が痛くてワイヤーを変えた日は何も食べれない
- ご飯が食べにくい
- 歯磨きが難しい
- 器具が粘膜に当たって痛い
- かっこ悪い
- 友達に装置のことをイジられる
当時の私は
「早く装置を外したい!もう嫌だ!」
以外の感情はありませんでした。本当に嫌で嫌で、器具を無理やり外して担当の先生に呆れられていました。
私の父が歯科医師ですが、父は矯正治療は行なっていなかったため、矯正専門の先生にお願いをして診ていただいていました。
にも関わらず、装置を破壊し、言われていトレーニングはやらず、本当に今考えると 超問題児でした。(歯科医師になってから担当の先生にはこれでもかと頭を下げてお詫びしました。先生は優しく『立派になったね』と言ってくださりました。先生に近づけるようこれからもっと頑張ります!)
そして歯科医師になり、小児歯科に携わるようになってから、昔の自分と同じように、
「矯正って痛そう」
「学校で目立つのが嫌!」
「そもそも矯正なんかしたくない!」
と不安を感じている子どもたちがワイヤー矯正を始めたものの、僕のように途中でモチベーションが下がってしまったり、お口を閉じるトレーニングやベロの重要性について指導をしても飽きてしまってそれどころではない子どもたちもたくさん見てきました。
そんな中で歯科医師になってから私が出会ったのが、マウスピース矯正でした。
痛みが少なく、つけ外しができる目立たない矯正
初めてマウスピース矯正を知った時
『うわ、これが僕の子どもの頃にもあったらなぁ。』 と心からそう思いました。
もちろん、すべての歯並びがマウスピースだけで治せるわけではありません。ワイヤー矯正にもマウスピース矯正にも、それぞれ得意・不得意があります。実際にワイヤー矯正や抜歯矯正を推奨して行うケースもあります。
だからこそ私は、矯正治療の基本となる診断やワイヤー矯正についても学んだうえで、
「子どもたちの負担をできるだけ減らし、しっかり治療できる方法を身につけたい」
と思い、マウスピース矯正を本格的に学ぶようになりました。
振り返ってみると、
自分自身が出っ歯で、矯正治療に苦労した経験が、今の私が小児矯正やマウスピース矯正を学び続ける原点の一つになっています。
……少し余談が長くなってしまいました。笑
それでは本題に戻りましょう。
そもそも「出っ歯」とは、どのような状態なのでしょうか?
そもそも「出っ歯」とは?
一般的に「出っ歯」と呼ばれている歯並びは、歯科では「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれることがあります。
簡単に言えば、
上の前歯や上顎が、下の前歯・下顎よりも前方に位置している状態
です。
ただし、ここで非常に重要なポイントがあります。
見た目では同じように「上の前歯が出ている」ように見えても、原因は一つではありません。
例えば、
- 上の前歯そのものが前方へ傾斜している
- 上顎が前方に位置している
- 下顎が後方に位置している、あるいは成長が小さい
- これらが組み合わさっている
など、さまざまなタイプがあります。

つまり、
「出っ歯=上顎が出ている」
とは限らないのですし、現代の子どもたちは後者の『下顎が後方に位置している』子がめちゃくちゃ多いです。
実際、AAPD(American Academy of Pediatric Dentistry:米国小児歯科学会)のガイドラインでも、Class II不正咬合は、歯の位置によるもの、下顎の後退や上顎の前突など骨格によるもの、あるいはそれらの組み合わせによって生じるとされています。
ここは、私が子どもの出っ歯を診断するときにも非常に大切にしている部分です。
「出ている前歯を見る」のではなく、「なぜ前歯が出て見えるのかを見る」
これによって、治療をするべき時期や治療方法が変わってきます。
「出っ歯」って珍しいの?
では、出っ歯の子どもは実際どれくらいいるのでしょうか?
世界各国の研究をまとめたシステマティックレビューでは、
混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)のClass II不正咬合( 出っ歯)は約23%と報告されています。

また、永久歯列では約19.6%でした。つまり調査地域などによる差は大きいものの、世界的に見るとClass IIは決して珍しい不正咬合ではありません。
(引用:Lombardo G, Vena F, Negri P, et al. Worldwide prevalence of malocclusion in the different stages of dentition: A systematic review and meta-analysis. Eur J Paediatr Dent. 2020;21(2):115–122.)
そして、
Class II=すべて「出っ歯」
ではありません。
そのため「子どもの4人に1人が出っ歯」と単純に言うことはできません。
しかし、
上顎前突やClass II傾向は、小児歯科・矯正歯科では決して珍しい問題ではない
ということは知っていただいてよいと思います。そして、近年下顎の成長不足により
相対的に出っ歯傾向にある子どもたちがとっても増えている印象があります。
何mmから出っ歯なの?
では、
「うちの子、ちょっと前歯が出ている気がするけど、これは出っ歯なの?」
という疑問もあると思います。
歯科では、上下の前歯の前後的な距離を**「オーバージェット(overjet)」**と呼びます。
簡単に言えば、
上の前歯が下の前歯より、どれくらい前に出ているか
を測ったものです。
日本小児歯科学会が示している3歳児歯科健康診断の不正咬合の判定基準では、
オーバージェット4mm以上
を上顎前突の基準としています。

ただし、ここも注意が必要です。
「4mmあったら絶対に矯正治療!」
という意味ではありませんし、
「4mm以下だと上顎前突ではないから経過観察でOK!」というわけでもありません。
年齢、前歯の傾き、上下の顎の位置関係、顔貌、成長方向、口腔習癖などを総合して評価する必要があります。
数字だけで治療の必要性を決めるものではないということです。
「前歯が出ているだけ」ではないことがあります
私が小児の上顎前突で特に重要だと考えているのが、
下顎の位置と成長
です。
保護者の方から見ると、
「上の歯が出ています」
という相談になることが多いのですが、横顔やレントゲンを詳しく調べてみると、
上顎が極端に前へ出ているというより、下顎が後方に位置しているために相対的に上の前歯が出て見えている
というケースが特に小児期は多いです。

これが「出っ歯を前歯だけで見ない」理由です。
例えば横顔を見たとき、
「下顎が少し小さく見える」
「顎が後ろに下がっている」
「口を閉じにくそう」
「口を閉じると顎先に力が入る」
といった特徴がみられることもあります。

このような場合には、単純に前歯を後ろへ動かせばよいという話ではなく、
上下の顎の前後的位置関係や、これからどのように成長していくのか
まで考えて診断する必要があります。
AAPDもClass II不正咬合の治療計画では、顔面の成長パターン、前後的な骨格差、年齢、協力度、スペースなどを考慮する必要があるとしています。
出っ歯は「見た目」だけの問題?
「多少前歯が出ていても、本人が気にしていなければ大丈夫じゃない?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、すべての上顎前突に矯正治療が必要なわけではありません。
しかし、出っ歯について考える理由は、見た目だけではありません。
その一つが、
前歯をぶつけるリスクです
前歯が前方へ大きく突出していると、転倒したときなどに上の前歯を直接ぶつけやすくなります。
2019年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、
オーバージェットが大きい子どもほど外傷のリスクが高いことが示されています。
例えば0〜6歳ではオーバージェット3mm以上の場合、歯の外傷のオッズが約3.37倍。
また混合歯列期〜永久歯列期の子どもでは、
オーバージェット5mmを超える場合、約2.43倍でした。

つまり、
「出っ歯だから見た目が気になる」だけではなく、「前歯を守る」という観点も重要
なのです。
特に子どもは、
走る、転ぶ、遊具で遊ぶ、スポーツをする……
と、前歯をぶつける機会が大人より多いですよね。
永久歯の前歯を強くぶつけると、破折だけでなく、歯の神経や歯根に影響が及ぶこともあります。
そのため私たちは、前歯の突出度も小児期から確認しています。
「出っ歯=すぐ治療」ではありません
ここまで読むと、
「じゃあ出っ歯を見つけたら、早く矯正した方がいいの?」
と思われるかもしれません。
しかし、ここは非常に大切なので強調しておきます。
出っ歯だからといって、すべての子どもがすぐに矯正治療を始める必要があるわけではありません。
小児矯正で大切なのは、
「早く治療すること」ではなく、「適切な時期を逃さないこと」
だと私は考えています。
子どもは成長します。
歯も生え替わります。
顎も成長します。
だからこそ、
「今すぐ治療した方がよい子」
「少し待った方がよい子」
「永久歯の萌出を確認してから判断する子」
がいます。
AAPDも、発育期の咬合管理では、正確な診断とともに治療時期(timing)が治療結果に影響する重要な要素であるとしています。
子どもの出っ歯は「これからどう成長するか」を見ることが大切
小児矯正と成人矯正の大きな違い。
それは、
子どもには「成長」が残されている
ということです。
そして、成人の上顎前突の治療は非常に難しいです
抜歯が必要になる場合や外科手術が必要になる場合もあります。
だから私は、今並んでいる歯だけを見るのではなく、
「この子の顎がこれからどう成長するのか?」
という視点を大切にしています。
出っ歯に見える原因が、
歯なのか。
上顎なのか。
下顎なのか。
口腔習癖なのか。
あるいはいくつかの要因が重なっているのか。
これによって、考えるべき治療方法もタイミングも変わります。
そしてこれは、口の中を一瞬見ただけでは判断できないこともあります。
必要に応じて、
顔貌写真、口腔内写真、歯列のスキャン、レントゲン、セファログラム(頭部X線規格写真)などを用いて、
歯だけでなく、上下の顎や顔全体のバランスを評価する
ことが重要になります。その上で、必要であれば早期に介入し正しい噛み合わせの獲得を目指していきます。
「出っ歯の子、増えてます」は本当?
冒頭で、
「最近、出っ歯傾向の子が多いと感じる」
と書きました。
では、本当に昔より増えているのでしょうか?
現時点では、日本の子どもの上顎前突が近年明確に増加している、と断定できる十分なデータがあるとは言えません。
ここは、歯科医師としてきちんと分けてお伝えしたいところです。
一方で、世界的な研究ではClass II不正咬合や大きなオーバージェットは決して珍しくありません。
また、口腔習癖については、AAPDも十分な頻度・期間・強さで持続すると歯や歯槽部に影響し、オーバージェットの増大などと関連する可能性を示しています。特に長期間の非栄養性吸啜習癖は、オーバージェット増大、開咬、臼歯部交叉咬合などとの関連が報告されています。
そして、私自身の臨床感覚としては矯正相談にお越しくださるお子様に
『出っ歯の子は増えてる』と強く感じています。
では、
「なぜ出っ歯になるの?」
遺伝?
指しゃぶり?
口呼吸?
舌?
姿勢?
それとも顎の成長?
ここは保護者の方から非常によく質問されるところです。
実は、子どもの出っ歯には一つではなく複数の原因が関係します。
そこで次回は、
「子どもが出っ歯になる原因は?」
について詳しく解説します!
岡山市で子どもの「出っ歯」が気になる方へ
子どもの「出っ歯」は、単純に前歯だけの問題とは限りません。
上の前歯の傾きだけでなく、上下の顎の位置関係、とくに下顎の位置や成長、口腔習癖などが関係していることがあります。
世界的な研究でもClass II不正咬合は珍しいものではなく、混合歯列期では約23%と報告されています。
また、オーバージェットが大きくなるほど、前歯の外傷リスクが高くなることも分かっています。
だからといって、
「出っ歯=すぐ矯正」ではありません。
大切なのは、
なぜ出っ歯になっているのかを診断し、その子にとって適切なタイミングを考えること。
「前歯が少し出ている気がする」
「下顎が小さい気がする」
「口がいつも開いている」
「健診で上顎前突を指摘された」
など気になることがあれば、一度かかりつけの歯科医院で相談してみてください。
岡山市東区・赤磐市周辺で、お子さんの出っ歯・上顎前突・小児矯正について気になることがありましたら、ぜひ一度さかい歯科クリニックにご相談下さい。
【さかい歯科クリニック 小児矯正ページはこちらから。出っ歯の症例も多数掲載しています】

<参考文献>
・Alhammadi MS, Halboub E, Fayed MS, et al. Global distribution of malocclusion traits: A systematic review. Dental Press J Orthod. 2018;23(6):40.e1-40.e10. DOI: 10.1590/2177-6709.23.6.40.e1-10.onl.
・Lombardo G, Vena F, Negri P, et al. Worldwide prevalence of malocclusion in the different stages of dentition: A systematic review and meta-analysis. Eur J Paediatr Dent. 2020.
・Arraj GP, Rossi-Fedele G, Doğramacı EJ. The association of overjet size and traumatic dental injuries—A systematic review and meta-analysis. Dent Traumatol. 2019;35(4-5):217-232. DOI: 10.1111/edt.12481. American Academy of Pediatric Dentistry.
・Management of the Developing Dentition and Occlusion in Pediatric Dentistry. The Reference Manual of Pediatric Dentistry. Latest revision 2024.
・日本小児歯科学会. 「3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準」—上顎前突をオーバージェット4mm以上としている









