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子どもの出っ歯はなぜ起こる?遺伝だけじゃない?歯科医師が原因を解説


こんにちは!
岡山市東区のさかい歯科クリニック、副院長の坂井優です。

前回の記事では、

「そもそも出っ歯とはどのような歯並びなのか?」

についてお話ししました。

🔻🔻まだの方は是非ご覧下さい🔻🔻

一般的に「出っ歯」というと、

「上の前歯が前に出ている」

というイメージを持たれる方が多いと思います。

しかし、実際にはそれほど単純ではありません。

出っ歯、歯科用語でいう「上顎前突」は、大きく分けると、

① 上の前歯が前に傾いている
② 上顎の骨そのものが前に出ている
③ 下顎が小さい、あるいは後ろに位置している

といったさまざまなタイプがあると前の記事でもお伝えいたしました。

つまり、同じように「出っ歯」に見えていても、その原因はお子さまによって違うということです。

では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

今回は一歩踏み込んで、

「そもそも、なぜ出っ歯になるの?」

という「原因」の部分を詳しく解説していきます。

私は日頃から小児矯正の診療に携わっており、2026年には歯科医師約140名を対象とした講演会にて、不正咬合をテーマに講演する機会をいただきました。今回も、不正咬合の一つである『出っ歯』についてわかりやすく解説していきます!

2026年 第1回BTB総会にて反対咬合をテーマに140名の歯科医師の先生方へ講演<br />

最初に最も大切なことをお伝えします。

出っ歯は、

「指しゃぶりをしたから」
「口呼吸だから」
「遺伝だから」

と、たった一つの原因だけで説明できるものではありません。

現在では、不正咬合は遺伝的な要素と環境的な要素が複雑に関係して生じる、『多因子性』のものと考えられています。

例えば、生まれつき下顎がやや小さくなりやすい骨格を持っていたとしても、それだけで必ず出っ歯になるわけではありません。

そこに、

など、成長期のさまざまな要素が重なることで、最終的な歯並びや顔つきがつくられていきます。

つまり、

「遺伝か、環境か」ではなく、「遺伝+環境」

として考えることが重要です。その上で、ここでは7つの原因を詳しくみていきましょう!


矯正相談をしていると、保護者の方からこのようなお話を聞くことがあります。

実際、歯並びそのものが単純に遺伝するわけではありませんが、上顎や下顎の大きさ・形・成長パターンには遺伝的な要因が関係していることが分かっています。

近年注目されている遺伝子の一つが、成長ホルモン受容体(Growth Hormone Receptor:GHR)遺伝子です。

2024年にGeorgeらが報告したシステマティックレビューでは、GHR遺伝子の多型と顎骨の成長との関連について、これまでの研究がまとめられています。

その結果、GHR遺伝子の違いは上顎よりも下顎骨の成長との関連が強く、特に下顎枝の高さに影響する可能性が示されています。

これは「出っ歯=上顎が出すぎている」とは限らないことを考えるうえでも重要です。

一見すると上の前歯が出ているように見えるお子さんでも、詳しく検査すると、実際には下顎の成長が小さい、あるいは下顎が後方に位置していることで相対的に出っ歯に見えていることがあります。

つまり、出っ歯の原因を考えるときには前歯だけを見るのではなく、「上顎と下顎がどのように成長しているのか」まで評価することが重要なのです。

ただし、GHR遺伝子だけで出っ歯になるかどうかが決まるわけではありません。顎顔面の成長は多数の遺伝的要因に加え、口腔機能や生活習慣などさまざまな要因の影響を受けます。

そのため、「親が出っ歯だから子どもも必ず出っ歯になる」というわけではありません。

【参考文献】
George AM, et al. Systematic review on the genetic factors associated with skeletal Class II malocclusion. J Orthod Sci. 2021.
George AM, et al. Role of the Growth Hormone Receptor (GHR) Gene in Skeletal Class II Malocclusion and Its Significant Influence on the Skeletal Facial Profile in Both the Sagittal and Vertical Dimensions: A Systematic Review. Cureus. 2024;16.


ここはぜひ知っていただきたいポイントです。

「出っ歯」という名前から、

上顎が前に出すぎている

と思ってしまいませんか?

ところが、実際には必ずしもそうではありません。

骨格性Ⅱ級の子ども310名を調べた研究では、

だったのに対し、

でした。

つまりこの研究では、上顎が前に出ていることよりも、下顎が後ろにあることの方がはるかに多かったのです。

もちろん中国の混合歯列期の子どもを対象とした研究なので、この数字をそのまますべての日本人のお子さまに当てはめることはできません。

しかし、

「出っ歯=上顎の出すぎ」とは限らない

別の5~9歳の小児350名を対象とした研究でも、下顎の後退は66%に認められています。

ということを理解するうえでは、とても興味深いデータですし、私の臨床感覚とも一致しています。何より

僕自身も下顎が後ろにある出っ歯でした。

🔻🔻詳しくはこちら🔻🔻

だからこそ、私が出っ歯のお子さまを診察するときには、

「上の歯が何mm出ているか」

だけを見ることはありません。

横顔や噛み合わせ、そして必要に応じて横顔のレントゲン(セファログラム)を撮影し、

を分けて診断することが大切です。

【参考文献】
Zhou Y, et al. Distribution of Various Maxilla-Mandibular Positions and Cephalometric Comparison in Chinese Skeletal Class II Malocclusions. J Contemp Dent Pract. 2021.
Distribution of Malocclusion Traits in the Pediatric Population of Milan: An Observational Study. Children. 2022;9:1614.


ここからは「環境」のお話です。

お子さまがテレビを見ているとき、

口がポカンと開いていませんか?

寝ているときに、

・口が開いている
・いびきをかく
・鼻が詰まりやすい

といった様子はありませんか?

こうしたお子さまでは「口呼吸」が隠れていることがあります。例えば

近年の研究でも、口呼吸をする子どもでは、

といった特徴との関連が報告されています。

下顎が下方向・後方へ回転すると、相対的に上の前歯が前にあるような状態になり、オーバージェット、つまり上下の前歯の前後的な距離が大きくなる可能性があります。

ここで注意したいのが、

「口呼吸をしているから出っ歯になった」と断定することはできない

という点です。

2026年に報告されたレビューでも、口呼吸と顎顔面の形態変化との「関連」は認められるものの、研究方法にばらつきがあり、明確な因果関係についてはまだ十分に証明されていないとされています。

もともとの骨格によって鼻腔や気道が狭くなりやすい可能性もありますし、鼻炎やアデノイドなどが原因となって口呼吸になっていることもあります。

つまり、

「口呼吸→出っ歯」

という一方通行ではなく、

呼吸・気道・舌・顎の成長・歯並びが互いに影響し合っている

と考える方が現在のエビデンスには合っています。

そして、呼吸・気道・舌へのアプローチは

ですので、必要に応じて耳鼻科の受診を推奨させていただく場合もあります。闇雲に

『とにかくお口閉じてね』

『お口のトレーニングしましょう』

と子どもに強要することは親子にとって拷問になってしまう場合もあります。(もちろんお子さんにとってはそれが必要な場合もございます)その子がお口を閉じられない原因が他にあるかもしれないからです。

僕自身、歯科医師と歯科衛生士の息子です。

「歯並びのためにお口閉じなさい」

と誰よりも口酸っぱく言われてきました。それでも、わかっていても、お口を閉じたくても閉じれませんでした。私は慢性鼻炎で年中鼻が詰まっていてお口が閉じれなかったからです。そんな経験を踏まえて、

現症の背景の原因

に目を向ける歯科医師でありたいと思っています。

【参考文献】
Mouth Breathing and Craniofacial Development in Children: A Systematic Narrative Review and Clinical Implications. 2026.
Farronato M, et al. Correlation between Malocclusion and Allergic Rhinitis in Pediatric Patients: A Systematic Review. Children. 2020;7:260.


では、口呼吸になると、お口の中では何が起こるのでしょうか?

ここで重要になるのが、

です。

皆さんは、何もしていないときに舌がどこにあるか意識したことがありますか?

本来、リラックスしているときの舌は、舌先だけではなく広い範囲が上顎側に位置します。

ところが、口で呼吸するためには、空気の通り道を確保しなければなりません。

その結果、舌が低い位置にある状態、いわゆる低位舌になっているお子さまがいます。

舌は単に「味を感じるための器官」ではありません。

歯列の内側から力を加える、とても大きな筋肉でもあります。

歯並びは、

内側から押す舌の力

と、

外側から押す頬や唇の力

のバランスの中に存在しています。

舌が適切な位置にあることは、成長期の歯列や顎の形態を考えるうえで重要な要素の一つです。

逆に舌が低い位置にある状態が続けば、上顎に対する舌の機能的刺激が変化し、狭い歯列などと関連する可能性があります。

だからこそ当院では、

「歯がどこにあるか」だけでなく「舌をどう使っているか」

も確認しています。


舌と同じくらい大切なのが「唇」です。

前述した通り、歯の位置は唇の筋肉とベロの筋肉の綱引きで位置や角度が決まります。

そして、上の前歯には、舌などによる内側からの力だけでなく、唇による外側からの力も加わっています。

ところが、日常的に口が開いていると、前歯に対する唇からの力のかかり方も変化します。

特に、すでに上の前歯が前方へ傾斜しているお子さまでは、前歯が邪魔になって唇を閉じにくくなり、

前歯が出る
↓
唇を閉じにくくなる
↓
口が開きやすくなる
↓
前歯にかかる唇の力が変わる

という悪循環につながる場合があります。

そのため出っ歯を診るときには、

「頑張らずに唇を閉じられるか?」

ということも大切なチェックポイントです。そして、再三になりますが閉じられないのであれば

何が原因で閉じられないのか?を見抜くことが大切です。


「指しゃぶりは出っ歯になるんですよね?」

これは臨床現場において非常によく聞かれます。

指しゃぶりやおしゃぶりなど、栄養摂取を目的としない吸啜習慣と不正咬合との関連については、多くの研究があります。

2024年のシステマティックレビューでは、長期間続く指しゃぶりやおしゃぶりは、

・上の前歯の突出
・オーバージェットの増加
・前歯が噛み合わない「開咬」
・奥歯の「交叉咬合」

などとの関連が報告されています。

さらに2025年のレビューでも、おしゃぶりの長期使用と開咬、交叉咬合、オーバージェットなどとの関連が報告されています。

ただし、

赤ちゃんがおしゃぶりを使ったら即座に出っ歯になる

という意味ではありません。

重要なのは、

「何歳まで」「どのくらいの頻度で」「どのくらい長く」

続いているかです。

これは保護者の方向けの無料相談でお見せしたスライドになりますが、本来

というのは吸啜反射と言って、子どもに備わった本能であり、意識して行なっているわけではありません。

これが、3歳頃の自我の芽生えと共に消失していくと言われおります。

しかし、家庭環境や兄弟の有無などさまざまな条件によって消失の時期も異なります。

ここでもやはり

『指しゃぶり、やめさせてください!』

ではなくて『なぜ指しゃぶりをしてしまうのか?』に目を向けられる歯科医師でありたいと考えています。

【参考文献】
Sadoun C, et al. Effects of non-nutritive sucking habits on malocclusions: a systematic review. J Clin Pediatr Dent. 2024;48:4-18.
Pacifier Use and Its Influence on Pediatric Malocclusion: A Scoping Review of Emerging Evidence and Developmental Impacts. Dent J. 2025;13:319.


ここまで読んでいただくと、

「出っ歯って意外と複雑なんだな」

と思われたのではないでしょうか?

その通りです。

一見すると同じような出っ歯でも、

など、さまざまな要素が関係しています。

そして、これらが一つだけではなく、複数重なっているお子さまも珍しくありません。

だから私は、

という考え方だけでは不十分だと考えています。

特に成長期のお子さまでは、

「なぜ、この歯並びになったのか?」

を考えることが非常に大切です。


例えば、下顎の成長が不足しているのであれば、成長期だからこそできることがあります。

口呼吸が疑われるのであれば、鼻炎やアデノイドなどが隠れていないか確認することも大切です。その上で耳鼻科の受診を推奨したり、アデノイドの切除を依頼する場合もあります。

舌や唇の使い方に問題があるのであれば、お口のトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)を検討することもあります。

一方で、歯そのものの位置や傾きが大きな原因であれば、マウスピース矯正などを用いて歯を動かす必要があります。

大切なのは、

「すべての出っ歯を同じ方法で治す」のではなく、「その子がなぜ出っ歯になっているのか」を診断してから治療方法を考えること。

これが、成長期の矯正治療で私が特に大切にしている考え方です。


ご家庭でチェックしてみてください

お子さまに次のような特徴はありませんか?

・上の前歯が前に出ている
・口がポカンと開いていることが多い
・寝ているときに口が開いている
・いびきをかく
・鼻づまりが多い
・唇を閉じると顎に梅干しのようなシワができる
・舌が下の歯の裏側にあることが多い
・飲み込むときに舌が前へ出る
・指しゃぶりやおしゃぶりが長く続いている
・横顔を見ると下顎が小さく見える

複数当てはまったからといって、必ず矯正治療が必要というわけではありません。

成長とともに経過を見てよい場合もあります。

反対に、

「永久歯が全部生えてから考えればいい」

とは限りません。

特に骨格やお口の機能が関係している場合には、成長期だからこそ確認しておきたいことがあります。

そして、次回はいよいよ

出っ歯シリーズ最終回!

じゃあ実際にどんな治療をどのタイミングでするのか?

これを詳しく解説していきますので、お楽しみに!


今回は、

という疑問について解説しました。

出っ歯の原因は一つではありません。

遺伝的な骨格の特徴に加えて、下顎の成長、呼吸、舌、唇、指しゃぶり、飲み込み方など、さまざまな要素が複雑に関係しています。

特に知っていただきたいのは、

「出っ歯=上顎が出ている」とは限らない

ということです。

一見、上の歯が出ているように見えても、実は「下顎が小さい・後ろにある」ことで、相対的に上の歯が出て見えているお子さまもいます。

だからこそ、見た目だけではなく、

歯・骨格・成長・機能

を総合的に診断することが大切です。

さかい歯科クリニックでは、歯並びだけを見るのではなく、

「なぜこの歯並びになったのか?」

という原因まで考えながら、お子さま一人ひとりに合った治療方法をご提案しています。

「うちの子、少し出っ歯かも?」

「口がいつも開いているのが気になる」

「まだ小さいけれど、一度診てもらった方がいい?」

そんな疑問があれば、治療を始める・始めないにかかわらず、一度お気軽にご相談ください。

成長期だからこそ、

今すぐ治療する必要があるのか、それとも経過を見てよいのか。

そこを一緒に考えていければと思います。

岡山市東区・赤磐市・瀬戸内市周辺で、お子さんの出っ歯・上顎前突・小児矯正について気になることがありましたら、ぜひ一度さかい歯科クリニックにご相談下さい。

【さかい歯科クリニック 小児矯正ページはこちらから。出っ歯の症例も多数掲載しています】

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